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広く深い中国茶

中 国 茶 と は

 

 

中国茶とは、中華人民共和国、および台湾でつくられている茶をさす。
台湾産のお茶を「台湾茶」と表現することもあるが、基本的な製法などは中国茶と同じであるため、一般的には台湾茶も中国茶として扱われる。

中国茶も日本茶も、もとはカメリア・シネンシスという学名のツバキ科の茶の木の葉からつくられている。その違いは製茶法によるものである。また、すべてのお茶が、中国を起源としているといわれ、各国語でお茶は、ティー(英語:tea)、テ(フランス語:thé)、チャイ(ロシア語:chai)などと呼ばれるが、これらはすべて中国語の「茶」の字の発音に由来している。

現在、中国茶として飲まれるものを詳細に分類すると数千種にも及ぶとされるが、製法によって大きく6種類緑茶・白茶・黄茶・青茶・黒茶・紅茶に分けられる。これらを六大茶類と呼ぶ。中国や台湾はいうに及ばず、世界各地にその愛好者を持っている。

 

 

 

緑 茶
新鮮な茶葉のさわやかな香り。銘茶も多く、花や珠など形もさまざま。

中国茶の緑茶は、茶葉を摘み取ったあとに加熱処理を行ない酸化発酵を止めた茶、無発酵茶である。加熱の際に茶葉を蒸さずに釜炒りする方法が主流である(日本茶の緑茶は蒸す方法が主流であるが、釜炒り茶も一部に存在する)。中国においても、緑茶はもっともポピュラーな茶であり、中国本土で消費される中国茶全体の消費量の7〜8割が緑茶である。

また日本茶は味に重点が置かれるが、中国緑茶は香りに重点が置かれるといわれる。

 

グラスの中に咲く、牡丹や青竹の景色を楽しむ。

また、揉捻の仕方などによって茶葉の形が異なることから、形で分類する方法もある。扁形茶(西湖龍井など)、眉茶、円形茶(平水珠茶など)というような分類である。ガラスの茶器を使い、さまざまな形状の茶葉の変化を目で楽しむことができるのも、緑茶の特徴。不発酵茶のため、摘みたての新鮮な香りがあるのが緑茶。春茶はとくに香りが高く、ビタミンCやポリフェノールをたっぷり含む。糖尿病治療やガン予防に効果があるともいわれている。

 

黄 茶
高貴な黄色、独特の甘味とさわやかな後味が印象的なお茶。

黄茶は茶葉の芽を摘み、緑茶とは異なるゆっくりとした加熱処理によって酵素による酸化発酵を行ってから、悶黄と呼ばれる熟成工程を経た茶。悶黄は、高温多湿の場所で茶葉を堆積させ、ゆっくりと発酵させるという黄茶特有のプロセス。悶黄次第で味や香りに差が出るといわれる。ちなみに、黄茶の代表格「君山銀針」の場合は、合計で72時間ほどの悶黄を行う。茶葉と水色が淡い黄色であるために黄茶と呼ばれる。製造量は年に数百キロにすぎず、六大茶類の中でももっとも貴重品。

 

中国の源氏物語、「紅楼夢」にも登場するお茶。

黄茶は歴史が古く、四川省の「蒙頂黄芽茶」はニ千年前には存在していたと伝えられている。湖南省洞庭湖にある君山で採れる「君山銀針」は、唐の時代にはその名を知られ、清代には乾隆帝(1711~1799)に献上された。皇帝や文化人たちは、ガラス器に茶葉を入れ、お湯の中での茶葉の動きを目で楽しんでいたという。中国の源氏物語ともいわれる清代の長編小説『紅楼夢』の第41話「賈宝玉が攏翠庵に茶を品する」の場面に出てくるのも君山銀針である。王朝人にも親しまれた銘茶の代名詞のような存在となっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

紅 茶
世界三大紅茶のひとつにランクされる、やさしい味わいの紅茶。

紅茶は、完全発酵茶だが、インドやスリランカ産の紅茶に比べてタンニンが少なく、渋味が少ない。中国紅茶には、福建省産の「小種紅茶」(正山小種など)や、じっくりと丁寧につくられた「工夫紅茶」(祁門紅茶、雲南紅茶、英徳紅茶など)、輸出用の「紅砕茶」の3種類がある。中国紅茶は、天日なり室内で干して茶葉をしおれさせる「萎凋」、発酵を促すために茶葉を強く揉む「揉捻」、茶葉を発酵させる工程を経た後で、「乾燥」を行って仕上げられる。この発酵のプロセスも中国紅茶特有の方法で行われ、これにより中国紅茶独特の味と香りが醸し出される。

 

古い時代から、果汁や果実のフレーバーティーも。

中国式紅茶の飲み方は「清飲法」といわれる。中国人は紅茶の葉が細かく刻まれているのを好まず、しかも紅茶の色と香りをストレートで楽しむ。イギリス式は「調飲法」といい、刻まれた茶葉にお湯を注ぎ、ミルクや砂糖を入れて好みの味付けをして飲む。
イギリスの紅茶文化も、そのルーツは中国茶である。17世紀の中頃にイギリスの東インド会社がオランダから茶貿易の権利を獲得し、中国から茶を輸入したことに始まる。また、中国には古い時代から紅茶に果汁などで香りをつけたフレーバーティーがあった。飲むと体が温まることから、寒い日に飲むと良いとされている。

 

茶 外 茶
健康、美容にいいお茶である。

広義の「茶」を、一般的な茶と区別するため茶外茶など様々な名称が用いられている。また、その原料として使用されているものは植物に留まらず、椎茸茶のような菌糸類や虫糞茶のように動物の糞を加工したものもあり、原材料の個性を味わえることのできる飲み物である。また、複数の原料をブレンドしたものや、茶樹の葉が含まれているものも、茶外茶として扱われる事がある。

茶樹の木から作られた茶は、長い間嗜好飲料として安心して飲まれてきた歴史を持つが、これら茶葉を用いない飲料にも「茶」と名づけることで安心して飲める飲料であるというイメージを与えたものとする説もある。日本では麦茶がいい例である。

中国においては「茶外之茶」、「非茶」、「非茶之茶」などとも呼ばれ、保健茶、薬茶、養生茶、などが含まれる。植物を原料とするものは草本茶または花草茶と呼ばれている。

中国にはたくさんの茶外茶があるが、そのほとんどは体にいい健康茶である。単独で飲むもの、複数の種類を合わせて飲むもの、お茶とブレンドして飲むものと、飲み方もさまざまであるが、いずれも味を楽しむというよりは、健康のために日々飲用するものが多い。

代表的な茶外茶

 

 

白 茶
粋人で知られた皇帝が愛したお茶。ゆっくりと自然な発酵が生みだす雅な味。

白茶は茶葉の若葉、もしくは芽を選んで摘み、これらをわずかに発酵(萎凋)をさせたところで乾燥させた茶。揉みこむ工程がないため、発酵はゆっくり進む。その若葉の産毛が白く見えるところから白茶と呼ばれている。一芯一葉で摘まれることがほとんどであり、白茶には高級品が多い。

 

千年近い歴史を誇る「お茶の王様」には解熱効果も。

白茶の歴史は古い。かつては福建省のお茶の王様ていわれ、白茶の代表格である「白毫銀針」は、詩、書、画に通じた文化人で、『大観茶論』を著したほどの茶通でもあった北宋の皇帝、徽宗(1082~1135)の愛飲茶として知られている。北宋時代には白い水色のお茶が好まれ、内側が黒い茶碗が使われていたという。徽宗が愛飲していたのは研膏茶(団茶の一種で、表面にツヤのあるお茶)で、現在のような散茶になったのは明代から清代にかけてといわれる。
白茶には、頭をはっきりさせるとか、二日酔い、夏バテによいといった効能があるといわれている。「
白牡丹」は体内に溜まった熱を排出するといわれており、香港では暑い日に飲まれるという。

 

 

 

青 茶
花のような特有の香りのお茶。健康効果も注目。

 青茶は、日本でも人気の高い烏龍茶などが属するお茶。半発酵茶と呼ばれている。発酵度の幅は15~70%までと広く、発酵度が高くなるにつれて、水色ばかりでなく、香りも味も淡いものから濃厚なものへと変化する。茶葉が発酵過程で銀青色になるため「青茶」と呼ばれる。よく揉みこまれているため、茶葉のひとつひとつが球状、もしくは曲がりくねった棒状になっている。烏龍茶と呼ばれる理由は、色が烏のように黒く、揉みこまれた茶葉の形状が龍の姿に似ているからともいわれる。

 

烏龍茶ポリフェノールの効果にも注目。

青茶の魅力といえば、花のような特有の香り。中国茶の世界では「香りを聞く」というが、とくに青茶は聞香杯と呼ばれる香りを嗅ぐためだけの茶杯があるほどだ。青茶の高い香りは、気分をリラックスさせ、食後には口中をさっぱりさせる効果がある。
近年の研究では、烏龍茶にはポリフェノールが多く含まれていて、血液中の中性脂肪を減少させ、生活習慣病の予防やダイエットに効果があるといわれる。また、老化を進ませる活性酸素の発生を抑える効果があるともいわれている。ちなみに、油を多く使う潮州料理の店では、食前食後にお猪口のような茶杯に濃い烏龍茶が一杯出される。食前の一杯は食欲増進用、食後の一杯は消化を助けるためという。

 

 

 

黒 茶
特有の熟成した香りが特徴のお茶。

黒茶は、茶葉そのものの発酵酵素の働きではなく、微生物を作用させてつくる後発酵茶。代表的なのは普洱茶

で、特有の熟成した香りが特徴である。
黒茶は、固めた状態の「緊圧茶」と、ほぐした「散茶」とに分類できる。緊圧茶にはさまざまな形状のものがある。円盤状の形をした「餅茶」、茶碗ほどの大きさと形をした「沱茶」、レンガの形をした「磚茶」、人の頭のような形と大きさの「人頭茶」、立方体をした「方茶」、穴あき銭の形をした「銭茶」、竹筒に詰めた茶葉を火で焙って竹皮に包んだ「
竹筒茶」などである。

 

 普洱茶には高価なヴィンテージものの存在も。

黒茶の産地、集散地といえば雲南省普洱山が有名だが、四川省(四川沱茶など)や広西省(広西六堡茶など)でも黒茶を生産している。ワイン同様、普洱茶はヴィンテージものが珍重され、30~40年くらいかけてじっくり発酵させた高級品には高値が付く。マニアにとっては垂涎の的である。
普洱茶には、脂肪を分解させ、消化を助ける効果があるといわれている。この効果を発揮させるため、食中や食後に飲むとよい。

 

 

 

 

 

工 芸 茶
見た目の華やかさを楽しむお茶。

工芸茶は、熱湯を注ぐと実のような形に加工された茶葉の束の中から花が開くお茶。香り、見た目、味わいと三倍楽しめる。

 

 

工芸茶は緑茶と様々な花茶を組み合わせて、手作りによるお茶の工芸品として現在に伝えられている。香りを楽しみ、目で見て楽しむ工芸茶は中国伝統の贅沢なお茶である。

 

 

工芸茶は乾燥した茶葉を一葉一葉集めて紐で縛り作られる。大変な技術を要し、一つ一つが職人の手によって作られる、まさに「芸術品」とも言えるお茶。中に花を入れたり、ジャスミンの香りを添加して作られるものもあり、お湯の中で花が開く様子は見事である。

一般の茶葉同様、製法、材料により高級品と普及品の間には品質に大きな開きがある。

 

 

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